秧歌は中国の伝統的な民間舞踊

秧歌(yāng ge)は主に中国の東北地方で広く行われている民間舞踏のことです。
もともとは宋代に行われていた田植え踊りが起源と言われ、扇子などの小道具を使い、銅鑼や太鼓、チャルメラの拍子に合わせて舞います。

地域によって様式が異なるため全てを紹介するのは難しいのですが、今回は河北省唐山市にある滦南(Luánnán)という地域の様子を中心に書きたいと思います。

秧歌の写真 秧歌の写真2
河北省の地図
▲ 唐山は天津の東にあります。

秧歌の種類

秧歌は大きく分けて2種類あります。
1つは「高跷秧歌(gāo qiāo yāng ge)」、もう1つは「地秧歌(dì yāng ge)」と言います。

高跷秧歌

高跷秧歌

「高跷秧歌」は地に足をつけずに踊ります。
竹馬のような木の棒を足に付けています。

地秧歌

地秧歌

「地秧歌」は地に足をつけて踊るものです。
滦南ではこちらを見ることができます。

秧歌はどんな時に踊るのか

秧歌は春節や結婚式など、お祝いの時に見ることができます。
特に町の通りなどで行われる時(过街秧歌)は、衣装はもちろん踊る内容に合わせて大道具・小道具も揃えたりするので見ごたえがあります。

なお滦南では元々は主に農業の閑散期である正月に行われていたようですが、現在は時節に関係なく多くの人が集まって行う「娯楽」もしくは「健康のための運動」の一種となっています。

特に夏になると何キロも離れたところから銅鑼や太鼓、チャルメラの音が聞こえてきます。
夏の農村は農繁期にあたり皆疲れているはずなのですが、夜になると公園や広場などにたくさんの人々が集まってきて、ほぼ毎日遅くまで元気に踊ったあげく、翌日は日が昇らないうちに再び起きて畑に向かい農作業を開始します。

いつ寝ているのかよくわかりませんが、とにかく本当にみんな元気です。

どんな踊りをするのか

地域毎に異なり、同じ地域内でも種類は1つだけではないと聞いています。
ここでは滦南で行われている代表的なものを紹介します。

一般的には数人で1組となって隊列を作り、踊りで物語を演じます。
組内での役柄とお話の概要は以下の通りです。


登場人物

  1. 妞(niū)
    若い女性の役
    扇子とハンカチを持っています。
  2. 丑(chǒu)
    青年男性(道化)の役
  3. 公子(gōng zǐ)
    書生の役
  4. 擓(kuǎi)
    年配の女性の役
    棒やキセルを持っています。

    ※ 擓の簡体字は常用語から外された為、繁体字で表記しています。

お話の概要

丑や公子といった男性が手引きを受けて若い女性に近づこうとするのを、年配の女性が割って入り邪魔をするというものです。
擓には男性を手引きする人(文擓)と、邪魔する人(武擓)の2人います。

役柄によって動作が完全に異なり、また秧歌を舞う「時」と「場所」、「演目」によっては隊列自体も様々な動きをします。

公園や広場で行われる簡易的な秧歌の場合は、妞、擓、丑が3人1組となって踊っていることが多いです。

自由に行っているものなので見学も自由です。ご興味のある方は一度行ってみてください。

公園で行われている秧歌の様子

公園で行われている秧歌の様子。
左側より武擓(青い服)、妞、公子の役です。
この時は女性役の衣装を用意していませんでした。

使用する楽器

演奏隊が主に使用しているのは唢呐(suǒ nà:チャルメラ)や鼓(gǔ:太鼓)、钹(bó:シンバルに似たもの)といった楽器です。
楽器名で大体想像がつくと思いますが、それぞれかなり大きな音がでます。


唢呐
唢呐(suǒ nà)
鼓
鼓(gǔ)
钹
钹(bó)


鼓には大鼓、堂鼓というものがあり、钹のかわりに铙(náo)が使用されることもあるようです。


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